2011年4月7日木曜日

虹の天使のつとめ

虹の戦士(天使)のつとめ
 
クリーという部族の国がカナダにあるというところから、話をはじめよう。
 
クリーはカナダでは最大のネイティブ・グループである。
北は北極圏、西はカナディアン・ロッキーから、東は大西洋岸に至るまでの広大な土地、おもに大草原をテリトリーにしてきた。
現在は大部分がカナダに、一部がアメリカのモンタナ州に分かれて住んでいる。アルゴンキン語族に属し、大きく五つの方言に分かれている。

このクリーの国に、かつて「火の瞳(アイズ・オブ・ファイアー)」と呼ばれるひとりの女性が暮らしていた。
彼女は年老いたときにある予言を残したことで、現代にその名をとどめることとなった。
 
その予言とは「いつの日にか、白人の欲(クリーの言葉で『ヨ・ネ・ギ』)が原因で、川の流れの中で魚たちが死に、鳥たちが空から落ち、水という水が黒ずみ、木がもはや生えなくなるときがくる」というものだ。
 
しかも人類の生存そのものが危うくなったとき、われわれがもう一度失われた健康を回復するために、昔から伝わる伝説や物語やさまざまな儀式や神話といった古代から部族に伝えられた習慣を守護する者たちが必要とされるときがくるだろうというのである。
 
そして人類生存の鍵を握るその人たちはやがて「虹の戦士たち」として知られるようになると。
 
 
虹の戦士たちは太古から残されたさまざまなメッセージを広め、すべての地球の人たちに「グレイト・スピリットの道の上での生き方」を教えることになる。今の世界がどのくらいグレイト・スピリットの道から背いてしまっているかを諭し、そのことによって「地球が病んでしまっている理由」を伝えてゆくだろう。
 
虹の戦士はまた、この時代を超えて存在し続けているもの(これもまたグレイト・スピリットと呼ぶべきもの)がいかに「愛」と「理解」にあふれているかを見せて、どうすれば母なる地球をもう一度美しくできるかを教えてまわるだろう。
 
虹の戦士は人びとにこの世界を正しく歩んでゆくための「法」もしくは「原則」を与えることになる。
 
そしてそれらの「法」も「原則」も太古の部族から伝えられてきたものであるだろう。
 
虹の戦士は人びとに、太古から伝えられた「みなをつなげる」「愛しあう」「理解しあう」ための技を広め、地球のあらゆる地域の人たちに分け隔てなく調和を広めてゆくだろう。
 
太古の部族の人たちがそうであったように、虹の戦士は人びとに山の清流のような、そしていくつもの流れを集めて生命の大きな海に注ぐ大河のような、つきることのない愛とともにグレイト・スピリットにむかっての祈り方を教えてゆく。
 
虹の戦士はたとえひとりでいても、大勢が参加する会議の中にいても、等しく喜びを感じることができるだろう。
 
狭量な嫉妬から心は解き放たれていて、肌の色や人種や宗教を問わずすべてのヒトを愛するだろう。
 
虹の戦士は自らのハートに幸福が入り込むのを感じるとき、すべてのいのちとひとつになることができる。
 
その心はどこまでも清らかで、ヒトと自然とグレイト・スピリットに対する暖かさと理解と尊敬とを放射しているだろう。
 
虹の戦士は自分の頭とハートと魂と行為とを汚れのない思考で満たしている。
 
彼らは命を支配するもの、グレイト・スピリットそのものの美しさを探し求め、祈りとひとりであることの中に、力と美とを見つけることになるだろう。
 
虹の戦士の子供たちはもう一度、自然と母なる地球の宝を堪能しながら、自由に走りまわることができるようになるだろう。
 
欲やそれに突き動かされた行為によって、肉体を汚されたり、命を失うような恐れからも解放されるだろう。
 
川の水も再び清らかに流れゆくようになり、森は豊かで美しいものに姿を変えて、たくさんの魚や動物や鳥たちが帰ってくることだろう。
 
植物や動物たちが持っている力が再び敬われるようになり、すべての美しきものたちの保全こそが、人間の生きるべき道となるだろう。
 
貧しい者や、病んでいる者、生活に困っている者には、地球に生きる兄弟姉妹たちが庇護を与えることになるだろう。そうした行いは虹の戦士たちの日々の暮らしの一部になることだろう。
 
ひとびとは自分たちの指導者を、政党や、偉そうだからとか、声が大きいからとか、大きなほらを吹くからとか、何度も連呼をしているからとか、罵りあうからという理由ではなく、その人間がいかなる行いをしているかを判断する太古からのやり方で選ぶようになるだろう。
 
愛と知恵と勇気を行いで示して見せた者、すべての良き人たちのためになるつとめをなしてきて、これからもそれができるだろう人物が、指導者やチーフとして選ばれることになるだろう。
 
その人たちは「人間の質」によって選ばれるのであり、彼らが稼いだ金の総量によって選ばれることはなくなるだろう。
 
思慮深く献身的だった遠い昔のチーフたちのように、彼らは愛によって人びとを理解し、子供たちが周囲の者たちの愛と知恵によって教育されているかどうか見るだろう。
 
彼らはいくつもの奇跡によってこの世界の病が癒され、健康と美が回復されることをひとびとに見せることになる。
 
「虹の戦士」のやらなくてはならないことはかくも多くすべてが偉大なものである。
 
越えていかなくてはならない無知の山はとてつもなく高くそびえ、偏見と憎しみとを見つけることになるかもしれない。
 
虹の戦士はハートを強く持ち、一途に道を進み、くじけてはならない。
 
もう一度母なる地球に美しさと豊かさを回復させるための道の上で、彼らは同じように強い意志を持った心と頭の持ち主たちを見つけることになるだろう。
 
その日は近い将来必ず訪れる。
 
そのとき、まさしく虹の戦士たちが存在してくれたおかげで、すべての部族の人たちが自分たちの文化的な遺産を保ち続けられたことが明らかになるだろう。
 
儀式や、物語や、伝説や、神話を生かし続けている者たちの声に耳を傾けよ。
 
その声の中に、まさにそこにこそ、彼らが守護してきた「知」が存在する。
 
それによってわれわれはもう一度、自然と、母なる地球と、人類とが調和するところへ帰還することができるだろう。
 
まさしく「わたしたちの生存の鍵」は、その「知」の中に見つけることができる。
 
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虹の戦士たちへ~まえがき
 
わたしたちは、現在、自分たちの生活を見直すべき時代を生きている。
 
この時代は、アメリカ・インディアンの信仰においては、空の星たちの位置の変化によって、一九六〇年代後半にはじまったことが確認されており、劇的なる変化は、活動に激しさを加えつつ世紀を超えて、二一世紀の最初の二〇年ほどを支配することになっている。
 
アメリカ南西部の高原砂漠に暮らすホピ族はこれを「偉大なる浄化の時」と呼んできた。
 
ホピの教えによれば、灰の詰まった瓢箪が二回地球を震わせた後、遠からずして浄化の時がはじまり、ホピと純粋な心をもったインディアンたちが力をあわせて、世界をよりよいところへとつくりかえていくことになるという。
 
この「灰の詰まった瓢箪」は「ヒロシマとナガサキに落とされた原子爆弾」をさす。
 
かつてわたしは自分の本(注)で、日本人が「ルーツを喪失したインディアン」である可能性を指摘した。
 
わたしたちは「あらかじめ母なる地球との絆を失ってしまっている」のだ。
 
そして「縄文時代のライフスタイルを今に伝える世界の先住民に残された教えと生き方を学びなおすことで、もう一度日本列島と自分とをつなぐこともできるはずだ」と。
 
その後もこの確信は変わっていない。
 
わたしたちはもともと遠い昔にはインディアンでありながら、インディアン的生き方とは一番かけ離れた対極的な「強欲に支配される生き方」を良しとしてきた。
 
それはわたしたちの自然の扱い方を見れば一目瞭然であるだろう。
 
日本人は、日本という国家を愛するほどには、日本列島を愛してはいない。
 
その結果、日本列島における自然は、ことごとくゴミに覆われて、もはやほとんど残されていない。
 
その昔、朝鮮半島やアジア大陸からの帰化人によって「大きな八つの島」と呼ばれた大きな美しい島々は、二千数百年を経て、今、見るに忍びない姿を曝している。
 
自然のままの浜も森も山も沼も、もうない。
 
二〇世紀には、あらかた原生林も消え、水も黒ずみ、空気も汚染した。川には死んだ魚が浮き、空かからは鳥が落ちた。
 
さらに世界中から食料や化石燃料や森林の木を切り倒して作る紙などの自然資源を大量に輸入することで、世界各地の先住民から土地と生きる権利や環境を奪い、精神的物理的さまざまなレベルにおける汚染を地球規模に広めてきた。
 
当然ながら、母なる自然は日本列島から潮がひくように姿を消しつつある。
 
気がついたときには野性の植物や動物の大半がすでに消えていた。
 
今生まれつつある赤ん坊はダイオキシンに汚染された母乳を飲んで育つのだ。
 
これは「地球が病んでいる」ことの証しである。
 
こうした地球の病に関わる問題は、わたしたちをわたしたちたらしめている生き方と密接に関連するのだ。
 
だから、わたしたちは、地球の病を癒すために、自分たちの生活を根本的に見直さなくてはならない。
 
世界各地の先住民の教えが伝えている。
 
地球が病んで、動物たちが姿を消しはじめ、人々が健康を失って愚かな振舞いを始める頃、つまり、地球の変化が激しくなって「偉大なる浄化の時」が始まると、伝説や、物語や、古い教えや、儀式や、神話や、太古の部族の風習などを、しっかりと守り続けてきた者たちの時代が到来すると。
 
地球上の生命あるものたちの生存の鍵を握っているのはその人たちだ。
 
日本列島でも例外ではない。本書のタイトルにもなっている「虹の戦士」とは、その人たちを指す。
 
虹の戦士たちは、誰からも命令や指示をうけない。戦士は「指示や命令がなければ動けない兵隊」とはまったく異なるからだ。
 
虹の戦士とは、自分が好きになれるような世界を作るために、なにかを自発的に始める人たちだ。
 
正義と、平和と、自由に目覚め、偉大なる精霊の存在を認める存在だ。日本列島は、母なる地球は、その人たちの到来を必要としている。
 
虹の戦士たちは、この教えを地球に生きる人々に広めることになるだろう。
 
偉大なる精霊の指し示した生き方を実践し、今の世界がその教えに背いているために、わたしたちの地球が病んでしまったことを伝えていく。
 
自分たちが好きになれるような世界を作るために、病んでしまった日本列島を癒し、もう一度地球を美しくするために、なにをすればよいのかを理解して、力強い行動をとることだろう。
 
本書は、わたしたちのなかで眠りこけている「母なる地球と直接つながる精神」に働きかけるものである。
 
すべてはその精神が眠りから目を覚まして、わたしたちのもとに帰ってくるかどうかにかかっているのだから。
 
北山耕平
暗い夜明けのときに

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